デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

目を三角にする彼女らに圧倒されながら桜は小さく言った。

「いや…可愛い女官さんでしたけど………」

「そんな問題じゃありませんわ!」
「そうですわっ、カナン様だって、桜様がいらした方が嬉しいに決まってますもの!」

(…言ってることがめちゃくちゃだよ、二人とも……)

何でおめおめと引き下がってきたのかと言わんばかりの勢いだ。

たじたじの桜に、ルネが聞いた。

「桜様は、どうとも思われなかったんですの?」

「え?」

一瞬質問の意味をはかりかねた桜に、フラウも尋ねた。

「カナン様がそうやって他の女に言い寄られているのをご覧になって、嫌じゃありませんでしたの?」

「……………」

なんだか少し動揺して、黒の瞳をさまよわせる。

「さ…びしくは、あります、けど……」

「それだけですの?」

「いらいらしたり、妬いたり、泣きたくなったり、なさらなかったんですのね?少しも」

その言葉に、先日の王とのお忍びでのことを思い出した。

アクセサリーの店で感じた、あの嫌な感情。『可愛くない』と言われたときに感じた、どうしようもない悲しさ。

あれは嫉妬なんかじゃない、とあれから自分に言い聞かせていたけれど。