デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

(あ、ここかな、王様がお仕事する部屋)

突き当りに、一際立派な戸が現れて、その前に近衛達が静かに控えている。その前の通路も、人の流れが多かった。

しかしよく見ると、微笑みを浮かべた女官らしき女性がちらほら、桜と同じように頭を拭く布だったり、ちょっとした差し入れを、近衛や近侍にそっと渡して、二、三言嬉しそうに言葉を交わして立ち去っていく。

(……ホントだ、アピールがすごいや)

もはや感心して見ていたが。

(じゃなくて……ええと、カナンはどこにいるのかな)

年齢によって序列があるのだろう、近衛も近侍も、年を重ねた人間がより戸の近くに並んでいるようだった。

少しきょろきょろと見回すと、戸の前に控える近侍達の列の端の方に、少し濡れた明るい金髪の文官が目を伏せ、静かにたたずんでいた。

(あ、いた。カナンて目立つなあ。見つけやすい)

少し笑って、桜が人の流れをぬって近寄ろうとすると。

カナンがふと目を上げた。
しかし、桜に気づいたわけではないらしく、横を向いた。

(あ…)

一人の若い女官が、少し頬を染めておずおずと柔らかそうな布を彼に差し出している。年の頃は、桜より少し下だろうか。
桜の方からはカナンの後頭部しか見えないため、その表情は分からなかったが、布を受け取って少し言葉を交わしているようだ。
女官がまたポッとなって一礼して去っていったところを見ると、厳しい事を言ったわけではないらしい。