厳しいその言葉にうつむいた。

「絶対に、一人にならないようにすると言っても?」

「ダメだ。そんな事が何の保証になる。はぐれたり、無理矢理連れ去られたりするかもしれない」

さら、と長い指が桜の耳元の髪を払った。

白い耳たぶに残る、赤い噛み痕。

憎しみが、胸に吹き上げた。

よくも、こんな。羽をもいでから、手足を斬り落として殺してやる。

「王様………?」

いつになく恐ろしい顔に、桜はおののいて、小さく声をかけた。

ふっ、と黒い渦から意識が戻り、そっと桜を抱きしめる。

「ああ……すまない、そなたに怒ったわけではない。だがこうなった以上、街に出るのは危険なのだ。もし、そなたがあ奴らの犠牲になどなったら、私は気が狂ってしまう」

ぎゅっ、と温かな腕に少し力がこもった。

「だから、この一件が解決するまで、私の言うことを聞いてくれ。よいな」

『魔』の恐ろしさは、確かに私はあまり分からない。なら、王様の言うことはちゃんと聞いたほうがいいだろう。

そしてその切実な様子に、桜はうなずいた。