ふうー…っと深くため息をついて、また桜を睨む。

「そなた、もう少しで命がなかったのだぞ。分かっているのか」

「す…すみません」

「しかも、瞳の色が金に光ったということは、そやつは王族だ。その辺の雑魚とは少し違う」

ちいっ、と舌打ちした。

「あ奴らは蛮族らしく、けだもの並に鼻は利くからな。そなたの匂いを覚えたというのも本当だろう。………汚らわしい」

冷たい光を瞳に宿して遠くを見るその横顔は、桜に見せる優しい顔や、感情に揺れる顔ではなく、石のように冷酷だった。

「少しずつ、王都を襲う準備をしていると見えるな。まあ、結界があるせいで、迅速に出来ぬのであろう」

フン、と冷笑した。

「やはり、蛮族は蛮族よ。私が単に奴らの襲撃を防ぐために、王都の結界を張ったと思っている。物事の虚と実を見抜けない。それで私に一泡吹かせようなどと、片腹痛いわ」

「王様……」

小さな声に、すっ、と瞳を揺らす桜のほうを見て言う。

「そなたはとりあえず、この一件が片付くまでは、街に出てはならん」

「えっ」

「当たり前だ。次同じことがあれば、おそらく今度こそ連れ去られるぞ」