一目散にテントの入り口に飛び込んですぐ、観客の数人が鋭い大きな声をあげたのが分かった。

あいつが逃げたぞ、とでも言ったのだろう。そのくらいは大体想像がつく。

でも、振り返っている余裕はない。ここで捕まったら、いっそうひどい扱いを受けたうえにすぐ殺されるかもしれない。

真っ暗なテントの中、気味の悪い空の檻たちにぶつかりながら、一番目のテントへの入り口をめざす。

後ろから、中年男の怒声が追いかけてきた。

恐ろしさと焦りで足がもつれながら、何とか一番目のテントへの入り口のカーテンを払った。

桜の予想通り、そこにいたのは痩せた中年女だけ。椅子に腰かけ、テーブルの上で今夜の売上金だろうか、金貨や銀貨の山を数えていたところだった。

いきなり現れた全裸の、傷だらけの桜を見て、女は悲鳴をあげた。

それが聞こえたのか、後ろから聞こえてくる男の怒声が大きく迫る。