デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

次の日の朝、衣の司にはシディの熱血指導を受ける桜の姿があった。

ピシ!

「あ痛」

「色糸をあんまりギューギュー引っ張るなって言ってんでしょっ。出来上がったときに縮んでしまうわ」

「あ……そうか」

髪紐は、基本的に編み図の通りに編んでいけばいい。しかも素手で編めるから、編み図の読み方が分かれば一見簡単そうなのだが。

(ちょっと、力加減が難しいかも)

きれいな目を出すために、あまり緩んでもいけないし、きつくなってもいけない。
素材が違う糸を使うと、もっと難しそうだった。
今桜が編んでいるのは、模様も何もない、一番シンプルなものだが、少し慣れるまでに時間がかかる。

「男性用と女性用の違いは、紐の幅の違いだけよ。あとはまぁ、デザイン的なとこかしらね」

シディが編み図を何枚か持ってきながら言った。

「アタシのオリジナル編み図、貸してやるから練習なさい。これが編めれば、大抵のものは編めるし、自分でもアレンジ出来るようになるはずよ」

「うわ……難しそう」

美しいが緻密なデザインに目を見張った。

フフン、と得意げに腕を組む統括長。

「そりゃね、アナタみたいな物覚えの悪い子豚にはハードルが高いけど。人に贈るんなら、売り物にできるレベルを目指しなさいっ。それに」

大きなニードルをシュバッと出して、恐ろしい微笑みを浮かべる。

「このアタシから直々に教わった以上、中途半端は許さないわよ。例え髪紐一本、ハンカチ一枚でもね!」