デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

夕餉まで少し間があったので、先にお風呂でも入ろうかな、と腰を上げると、戸が叩かれた。

(あれ、ごはんかな。早いな)

「はい」

返事をすると、カナンが顔を出した。

「あれ?カナンどうしたの?」

驚いて目を丸くすると、少しその緑の瞳をそらす。

「もう仕事が終わったから……帰る前に、ちょっと会いに来ただけだ」

え、と固まった桜。

(そっか、街に出るとき、先にカナンを帰したから、お仕事早く終わったんだ)

「良かったね、早めに帰れるね。誰かとごはんにでも行くの?」

「いや……まだ同僚は仕事してる。ただ、今日はあまりお前に会えなかったから」

少し顔を赤くして、小さく言った。

「あ……」

つられて、桜も少し頬を染める。ぎこちない空気が流れる前に、グラスに茶を注いで戸口に運んだ。

「次から、お茶菓子も用意しとくね」

あは、と苦笑いすると、彼も少し笑う。

「いや……大丈夫だ。甘い物、苦手だから」

戸口に並んで座って、茶を飲んだ。

「今日…何か特別な事したのか?」

「え?」

「いや……先に公宮に帰れと言われることはあまりないからな。しかも、女官の口伝えで」