デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ふう……と桜の隣で、満足げなため息が聞こえた。

「楽しかった」

「そうですか……私はもう恥ずかしくて死にそうです」

指をもてあそんで、顔をパタパタとあおいだ。

「そうか?」

「そうです!」

「私は嬉しくてたまらんがな。なにせ、初めてそなたが嫉妬」

「わーわーわー!!」

あわてて両手で王の口をふさいだ。

「もう、忘れてください!」

「嫌だ」

ふふ、と笑って、桜の両手を取った。

「いつもいつも、私はそなたよりずっと深い嫉妬に苦しめられているのだ。少しは私の気持ちも思い知ることだな」

すまし顔で言ったところで、馬車が来た。

乗り込んで、「公宮までお願いします」と桜が言うと、御者はうなずいて馬に合図をする。

走り出すと、王が少し物憂げな顔になった。

「……『王』に戻りたくないな」

「そうですか?」

「ああ。本当に自分がただの遠い地の民で、そなたの夫であったなら、どんなに幸せだろう」

その言葉は、すぐに馬車の轍の音に消えた。