デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王の、その言葉と表情の恐ろしさの中にある大きな不安と悲しさが、桜の胸をえぐった。

でもまずはとにかく、落ち着かなきゃ。

「違うんです、あの人はそんなんじゃありません。それどころか、私もう少しで殺されるところでした」

信じてほしくて、じっとみつめる。

「……何?」

ふと、その表情を怪訝そうにしかめた。

「王宮に帰ってから、お話します。でも信じてください、あの人はそういう……内緒で会うような人じゃないし、指輪なんて、冗談じゃないです」

少し顔を青くして、ぶるっと震えた。

「…………」

王はかなり困惑していたが、偽りのなさそうな桜の様子を見た。

そして、大きく息をつき、まだくすぶる激情を鎮めようと、目をぎゅっと閉じてこめかみを指で押さえる。

「…………」

しばらくそうして、静かに目を開けた時には、もういつもの穏やかで聡明な彼の意識が戻ってきた。

(………桜を好きになるにつれて、そして桜が磨かれて、いっそうあの三人がこの娘を愛するようになっていくにつれて……私の中の醜い感情も育っている)

自分ではないかのような、暴走する真っ黒な負の気持ち。

もし、もう理性では抑えられないほどに爆発してしまったら、本当に彼女を取り返しのつかないくらいに傷つけてしまうかもしれない。

誰よりも優しくして、愛おしんで、いつか全てを彼女から自分に捧げてくれるようにしたいと思っているのに、その障害がまさか自分自身の中にあるとは。

また大きなため息をついて、そっと桜の手を取った。