デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「う!」

苦痛に顔を歪める彼女に、低い声で鋭く聞いた。

「言え。私の目を盗んで会うほど親しいのであろうが。どこのどいつだ」

いつの間にか、桜が秘密を持っていた。自分が知らない人間と会っていた。そしてその人間をかばってか、自分に何も言おうとしない。
手ひどく裏切られたようなショックが、王の心に爪をたてていた。

「ち…違…誤解……」

「……そなたが、指輪が欲しいと願う者か?」

「え……?」

「あやつに、その瞳で、その声で、指輪を乞うかわりに、そなたの心を捧げたいのかと聞いているのだ!」

乱暴に手を離して、桜が咳き込む。

つかんだままの手首に、ますます力を込めた。痛みに声を上げたが、嫉妬と怒りに取り憑かれた彼には響かなかった。

「私以外の男からの指輪など、つけさせぬぞ。例えそなたの手首を斬り落としてでもな」

紫の瞳に、ゆらゆら燃えるような狂気。

「……っ、何でそんな、残酷なこと……」

顔色を失う桜に、皮肉な笑いを投げる。

「残酷?………そなたにだけは言われたくはないわ。私に、狂おしいほどの喜びを与えておきながら、すぐにこうやって奈落の底に突き落とすではないか。私がもう、そなたしかいないと……後戻りが出来ないと知りながら」