デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王が、顔をますます強張らせて足早に桜のもとへ来た。

「誰と会っていた?」

「えっ……?」

びくっと小さく肩を揺らして、紫の瞳を見た。そしてすぐにそらす。

「あ……その……」

どうしよう。『魔』だと打ち明けるのは簡単だが、こんな人の多い所で、今言われたことを教えるわけには。

潤んだ瞳を揺らして言いよどむ桜の手首を、彼の手がつかんだ。

「誰かに、会っていただろう。一瞬だが、そやつのマントが見えた。誰と会っていた」

ぐぐ、と手首をつかむ手に力が込められる。

とにかく、ここでは言えない。王宮に戻ってからだ。

「あっ……の……み、道を、聞かれて………」

王の剣幕に、小さく答える。

青ざめて、目をそらす桜。その嘘にもなっていないような嘘に、彼の怒りが煽られた。

「私が見つけたと同時に、コソコソと去っていく通行人か。随分と都合のいい道の尋ね方だな」

「………」

「あやつは誰だ。いつ知り合った?私の臣下ではないだろう」

困った桜が、

「……言えません」

今ここでは、と付け加えようとした時、がっ、と今度は首をつかまれた。