デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「有り金と言われてもな……。その金が無いから質屋の場所を尋ねているのだが。まぁ良い、知らぬなら別の者に聞くゆえ、行っても良いぞ」

ヒラ、と手を払う動作をし、回れ右をして桜のもとへ。

野次馬から、クスクス、そりゃそーだ、バカだあいつ、などと小さく笑われた男は、真っ赤になってプルプル震えた。

「てめぇコラ、待ちやがれ!」

王の肩をつかみ、ぐいっと向き直させる。

「何だ。周りの人間に危害が及ぶぞ。人の密集地での粗暴な振る舞いは止すがいい」

子に親が言い聞かすように、静かに王は諭した。
その冷静な態度がますます気に食わない。

「この…!!」

拳を振り上げた瞬間、

「ま、待ってください!」

たまらず桜が間に割り込んだ。

「何だテメ」

「あの……しゅ、主人…が申し訳ありません。えっと、遠くから来たものですから、王都に慣れていなくて。どうか許していただけないですか」

赤くなったり青くなったりしながら、あわあわとこの場をおさめようとした。

が。

「うるせぇ、引っ込んでろブス!」

パチン、という音とともに、桜の体がぐらっと横に揺れた。

「きゃっ」

頬に衝撃が走って、思わず手で押さえる。