デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王はしばらく、フードの陰にその顔をうつむかせていた。

固く目をつぶって、胸が痺れるような嬉しさから、桜を抱きしめてしまいたい気持ちを必死にこらえた。

今まで言われたどんな言葉より、嬉しい。

自分でも忘れかけていた、いやほぼ忘れていた『自分』を見てくれることが、こんなに幸せだとは。

王ではなく、自分は自分だという、目の前の娘。

もっと、見てほしい。自分の事を。一人の人間としての自分を、他の誰よりも。

彼女の心が欲しい。愛されたい。

焼けるようにそう思った。

頬を染めたまま顔を上げて、少し泣きそうな顔で笑って桜を見つめた。

「……ここが、宮の部屋でなくて良かったな、桜」

「え?」

「多分我慢できずに、そなたを私のものにしてしまっていたと思う」

「!?」

真剣にとんでもないことを言う王に、桜は目を見開いて、たちまち赤面した。

「な……」

「……時間がもったいない。行こうではないか、妻よ」

せつない思いを冗談めかした微笑みでごまかして、桜の手を握り直してまた歩き始めた。