獣は一瞬何が起ったか分からないかのように、あわてて身をかわした。

その間になんとか下から這い出た桜は、肩で息をしながらまた距離をとる。

―うまくは、いった。奇跡的に。

でも、成功かどうか…


ゲッ、ゲッと喉の不快感をはらうようにえづいた敵は、怒りに燃える目で再び桜の方へと向き直った。

ズキズキと思い出したように激しく痛みだす腕の傷をまた押さえて、祈るようにその目を見返す。



グアアアアア!!!


大きく吠えたかと思うと、もう立つ気力もない桜に飛びかかろうと地面を蹴った―その時。

フラリ、と獣の体が揺れる。

まるで酔っぱらったかのように、力なくペタンと前足をついた。