デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜は面食らったが、

「庭師が出入りする場所がある。そこから出よう」

何の事はないとばかりに、桜の手をつかんでさっさと中庭に出た。

王の言うとおり、建物の隙間にあまり目立たない小さな出入り口があった。

「……ホントだ、すごい………」

思わず小さくこぼすと、紫色の片目をつぶって言う。

「何百年住んでいると思ってる。王宮内の事は、私が一番詳しい」

そこを通り、ぐるりと建物全体を壁伝いにまわって、公宮の正面に出た。

(う……人、やっぱりそこそこいる……)

行き交う臣下たちに、顔が引きつる。

「大丈夫だ、コソコソしている方が余計に目立つ。誰も私がこんな格好で、近侍も近衛もつけずにいるとは思っていない。今までこんな事はしたことなかったからな」

楽しそうに笑い、美しい顔を上げて歩きだした。

「ちょっ……待って、王さ…じゃない、なんて呼べばいいの………とにかく、フードかぶって!」

「なぜ」

「目立つから!」

桜はハラハラしっぱなしだ。なかば無理やりにフードをかぶせた。

「はあ…」

「行こう」

スタスタと長くてゆるやかな階段を下っていく。

やっと下に降りて、馬車の乗り場に向かった。