デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「よし、行くか桜」

心底嬉しそうな表情で、王が手を差し出す。

(しょうがないなあ、もう…)

桜も覚悟を決めて、その手を取った。

渡り廊下を、二人で歩く。

「王様、どこから出るんですか?裏門みたいなところから?」

「いや、表から出る」

平然と言ってのける彼に驚いた。

「え……文官さんとか、謁見とかに来て、王宮から帰る人とかたくさんいるんじゃ」

「大丈夫だ、かえって裏門にコソコソ向かうほうが、近衛に見つかる可能性が高い。彼らの職務は王を警備することであって、王を監視することではない。だから、他人の怪しい動きには敏感だが、まさか私が自ら外に行くような真似をするとは思うまい」

くすくすと小さく笑う。

「近衛は王都武官の中でも頂点に立つ優秀な人材だが…果たして」

その駆け引きすら楽しそうだ。

桜は今から生きた心地がしないのに。

「王様、ちょっと部屋に寄っていいですか。ケープ、取りたいんです」

客用の宮にさしかかり、桜が聞いた。

「ああ」 

うなずいて、一緒に宮の中へ。
戸口を開けて、ぱたぱたと小走りで中へ入る彼女の動きで、部屋の中の空気がふわりと戸口に動いた。

(……あの娘の、香りがする)

わずかに鼻に届いたそれに、王は目を細めた。

(本当に、たまには私がこっちへ来て午後を過ごしても良いかも知れない)

そう思った。