アレと、あの赤髪に言い寄る女がひっきりなしだというのは、そこそこ有名な話だ。

(適当にその中から遊んでいればいいものを)

心の中で舌打ちする。わざわざ桜でなくたって、結婚はもとより、割り切った関係でも飛びつく女なんかいくらでもいるはずだ。

あの武官達に、彼女を忘れさせる娘が現れないものだろうか。

カナンにとっては、桜以外の女性は有象無象だ。

(一人ぐらい、役に立つ女はいないのか。全く……)

彼らの周りにアリのように群がっているであろう娘たちに対して、冷酷に罵った。

(……が、そんな女に引っかかるなら、所詮はその程度だがな)

こんな娘は二人といない。

庭園に吹く風を受けて、気持ち良さそうに目を細める彼女の横顔を見ながら思う。

そっと、その手を取った。

何度も繋いでいるのに、未だに驚いた顔をして、ふわりと頬を染める。

「カ、カナン、あの…」

「何だ」

「手…………恥ずかしい」

「誰も見てない。私が繋ぎたいから繋いだんだ。文句あるのか」

あう、と二の句が継げなくなる彼女の顔を、澄まし顔で見つめた。