デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

オモチャのような槍は、小さなナイフと木の棒になった。

獣から目を離さぬよう、注意深くその二つを拾いあげると、また敵と対峙した。

じり、と相手が間合いを詰める。

…多分、ひとっ飛びで私を仕留めにくる。


勝負は一瞬。


どうか、うまくいきますように。


ドクドクと心臓の鼓動が、頭に響く。


「……」


わずかに、桜が片足を後ろに動かした――その刹那。


鋭い声と共に、目にもとまらぬ速さで、猛獣の牙が眼前に迫った。