デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

あらかた料理を取り分けて、フードを下ろす桜。

乾杯した後、アスナイがさっき脱いだマントを引き寄せた。
内に付いている小さなポケットを探り、あの小さな紙袋を出す。

「桜。…これ」

「え?何ですか、これ……さっきのお店で?」

うっすらと頬を染めて、ぎこちなくうなずく。

「……お前に、似合いそう、だったから」

好きな女性に贈り物などした事のないアスナイ。
いつになく緊張して、身を固めていた。

「え……そんな、いいんですか?私、ただでさえご馳走になっちゃってるのに…」

困って彼を見ると、軽く紺色の瞳が彼女を睨んだ。

「お前に金なんか使わせない。そんな恥ずかしいマネするわけないだろ」

王やカナンやシュリと同じことを言う。

「あ…じゃあ、あの、ありがとうございます。………開けてもいいですか?」

「ああ」

その返事に、カサカサと袋を開けて、中の物を取り出した。

薄ピンク色の小さな花がたくさん付いた、髪留めだった。華やかだが、派手ではない。

「これ……桜だ」

あの旅で、アスナイの髪に付いてきた、ソメイヨシノそっくりの小さな花。初めて彼女にはっきりと心を奪われたときの。

「かわいい……」

頬を染めて瞳を輝かせながら、うっとりと見つめた。

バレッタのように使うものらしい。

桜はそっと、両サイドの髪を後ろへ持っていき、パチンとその髪留めで簡単なハーフアップを作った。

「ありがとうございます、アスナイさん!大事にしますね」

あの旅で見せた微笑みそのままに、桜はアスナイを嬉しそうに見つめた。

ああ、また……もっと好きになる。

そう思いながら、彼はその目を細めた。