デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

二人が入ったのは、シュリと行った時のような、半個室が並ぶ店だった。

飲み物と食事を注文して、マントを脱ぐアスナイに、桜が尋ねた。

「アスナイさん、次のお休みって、もう決まってますか」

「次の休み?……いや、まだ流動的だな。おそらくは七、八日後だとは思うが」

一週間くらいか。よし、頑張ろう。

こく、とうなずく桜を、不思議そうに見る。

「基本的に、上の人間から好きなときに休みを取っていって、俺達のような若い奴らは残ったところに適当に取るからな」

「そうなんだ……なんか、やっぱり厳しいですね、上下関係が」

小さくうなる桜。

「まあな。良くも悪くも。だから鼻っ柱が強くなきゃ、武官は務まらない」

やっぱ体育会系なんだなあ、と思いながらうなずく。

ふと、カナンの顔が浮かんだ。若い女性がどうしてもダメだったという事で、文官になったというが。

(確かに、そこさえクリアしてれば、きっと武官になってたんだろうな……それも、きっと優秀な)

「例えば、文官から武官になったり、その逆はあるんですか」

ふと、聞いてみる。すると、アスナイはひらひらと手を振りながら苦笑した。

「いや、まずあり得ない。仕事の畑が全然違うからな。向き不向きだってある。例えば考えてみろ桜、あの赤髪のバカに、宮中の権謀術数を生き抜く知恵なんか、あると思うか?」