デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ぴた、とその目が止まる。

顎にやっていた手を、おもむろにその中の一つに伸ばした。

じっとそれを見つめていたが、女主人のいるカウンターへ持っていった。

「これをもらう」

「毎度、ありがとうございます。あの、フードの……彼女さん?いや、奥さんにですか?フードをかぶるなんて慎み深くて、これにピッタリですねえ」

初めて、自然に男女に見られた。

思わず微笑みがこぼれる。

「…同僚の武官にも、女への贈り物はここで買うように言っておく」

そう言って、小さな紙袋を受け取った。

デザインの参考にしようと、熱心に髪紐を見ていた桜に声をかけて、店を出た。

「あれ、何か買ったんですか」

外で初めて、アスナイが小さな袋を持っているのに気づいた。

「ああ、ちょっとな」

言いながら、愛馬の綱を解く。

「さて、夕食をとりに行くか」

また手を取り、歩き始めた。