デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

たまらなくなって、その場で桜を抱きしめた。

「わぁっ!も、もう!また、アスナイさん!」

赤くなってじたばたと抗議をするが、すぐにあれ?と動きを止めた。

いつものように、くすくすと笑う声も、からかうような眼差しもない。

まるでしがみつくような抱擁は、両手がはっきりと震えていた。

「ホントに、どこか具合が悪いんじゃないんですか?早く、宿で休んだほうが」

本気で心配し始める桜を見つめる。

その顔は蒼白で、見開かれた目は紺色の瞳が揺れていた。

「……早く、俺を選んでくれ、桜」

「え………」

「もう……明日にでも、今すぐにでも、連れて行きたい」

一刻も早く自分のものにして、一緒にいたい。

絶対に彼女が消えないように。奪われないように。

切実な言葉に頬を染めたが、また自分を抱きしめる、いつもと違う様子のアスナイの姿に、桜は戸惑った。

「ま、待って……あの………」

アスナイは今まで、怖いと思ったものはなかった。
知恵と努力で打ち倒せないものなどないと、固く信じていた。

だが今初めて、桜をここに連れてきた、そしてどこかに永遠に連れ去ってしまうかも知れないその力を、心の底から怖れた。