デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

グッ!と手を強く握った。

「あ痛」

びっくりして、桜がアスナイを見る。

「……………」

「アスナイさん?どうしたんですか、なんか、顔色が……」

じっと心配そうに、自分を見上げる桜。

ああ、ここにいる。

それを見て、ホッと息をついた。

「いや……」

「わ、ちょっと汗かいてますよ。大丈夫ですか?」

ためらいなく、白のストールでそっと彼の額を押さえる。

小刻みに震える手を悟られないように、マントの陰に隠した。

一瞬だったが、強烈な恐怖。

「大丈夫だ、ありがとう」

無理矢理に笑顔を作った。どことなく固いその表情に、まだ桜は心配顔だったが、アスナイは「行こう」と桜の手を繋いだまま歩き出した。

すっかり忘れていた。彼女が、この世界の人間ではないこと。
いきなり不思議な力に導かれて、ここまで流れ着いた娘だということ。

その刹那、恐ろしい考えが彼の明晰な頭に浮かんだ。

……桜がどこかへ行ってしまわない保証なんか、ない。また、不思議な力が働いたら。
彼女はこの世界から、いなくなる。