デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜は困惑して、目線をさまよわせた。

しばらく沈黙したあと、あきらめたように口を開く。

「…分かりました……今回だけなら。…私も、もう傷つきたくないので……」

その言葉に大きく息をついて、もう一度ぎゅっと桜を抱きしめた。

ゆっくりソファに戻り、腰掛ける。

「……口づけても、よいか」

そんなことを小さく聞かれ、桜は一回固まって赤面した。

(い、いつも聞かないでするくせに……)

余計に恥ずかしい。

そっと王の顔が近づいて、桜の左頬に柔らかな唇が触れた。
いたわるように、何度も優しくキスをする。

そして、一瞬目線を合わせて、彼女の唇に。

そうしながらゆっくり、黒髪をなでる。

(あれ………?)

また。さっき言い争う前に感じた、胸のフワフワがよみがえる。
すっ、と長いまつげが少しだけ上がり、紫色の瞳が薄く桜を見た。

とく、と胸が波うって、思わず今度は桜が目を閉じた。

(何だろ、これ……。どきどきするけど、何だか…)

自分でも気づかないうちに、王の両肩にそっと手をのせていた。