デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「……もう、何が本当かわかりません」

ため息をついて、ぽつりと言う。

「だって、どう考えても、普通王様みたいな人が、私を好きになってくれるって思う人、いないと思うもの。女官さんの方が、中身も外見も可愛いって言葉の方が、説得力あるもの……」

「そなたの認識はこの際良い。私は誰でもない、そなたがいいのだ」

ますます腕に力を込めて、懸命に失いかけた信頼を呼び戻そうとする。

そっと、自分がさっき叩いた頬をなでた。

「本当に、すまない……痛い思いをさせた………」

叩いた瞬間の、あの崩れるようにもろい手応えを思い出し、顔を歪めた。

「やはり何と言おうと、嫌われて当然だな……」

唇を結んで、目を閉じた。長いまつげが影を作る。

「いいです、もう。私だって王様の顔を叩きましたし……」

桜がそう言うと、細く目を開け、震える声で小さく言う。

「信じて、くれないか……もう一度だけ」

「…………」

「……もう、あきらめるには、そなたを好きになりすぎた」

「頼む。………でないと………」


―――無理矢理に、この宮の奥に閉じ込めてしまいそうだ。鎖で繋いで、身体の自由を奪って。自分の、日々少しずつ大きくなる黒い感情のままに。