デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

途方にくれて、彼のシャツの裾をそっと引っ張る。

「ごめんなさい、つい、王様の手が気持ちよくて」

(ちょっと、どきどきして。でも何だかフワフワして嬉しくて)

ここまで言えたら一発で機嫌など直っていただろうが、惜しい。

相変わらずこっちを見ない。
臣下に見せる、冷静で揺るぎない姿からは想像もつかない拗ねっぷりだ。

「ねえ…王様…」

そっと腕をつかんでゆらす。

身体をすり寄せて甘えるなんて芸当はできないし、第一思いつかない。そしてそんな事が思いつくような人間は、ここまで鈍くない。

(ダメだ、こりゃ)

ガクリとうなだれて手を離し、ため息をつきながら距離を取った。

「王様、ずっとそのままですか」

「……」

「もう、じゃあ私、帰りますからね」

桜が立ち上がる気配がして、ソファが揺れた。

王は内心焦るが、引っ込みがつかない。
振り向いて、ジロ、とまた睨みつけた。

「…可愛くない娘だ」

グサッと胸に刺さる。
いつも優しい言葉を向けられて、言い争いをしても大抵、王の愛情からくるものだったから。

初めて自分を否定する言葉を言われて、驚くほど動揺した。