デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ひょこ、と部屋の帳を払って顔を出すと、王が微笑んで歩み寄ってきた。

「桜。…おいで」

いつものように手を取って、ソファへと連れて行く。

「今朝、公宮にいたな」

「あ…はい、目が合いましたね」

にこ、と微笑み合う。

「なかなか、皆さんのようにすぐ礼ができなくて。すみません」

桜がそう言うと、微笑みのまま頭を振った。

「いや……今日のほうがいい。顔を合わすことができて、嬉しかった」

そっと、長い指が黒髪をなでる。

また、今朝感じたような胸の高鳴り。

(?………??なんだろ)

混乱や緊張をきたすようなものではなく、甘くてフワフワする。

(どきどきするけど、何だか気持ちいいな)

ぽっと頬を染めて、思わずそっと目を閉じた。

そんな彼女に、王は少し驚いた表情をしたが、また目線を和らげて、変わらず髪をすきながらゆっくり、こわれものを扱うかのようにそろそろと優しく抱いた。

「ふふ…気持ちいい」

思わぬ桜の言葉に、嬉しくなる。

(そうか。こうやって、ごく優しく触れられるなら、抵抗感もあまりないのだな)

貴重な情報を得た、と思った。

が。

「………『お父さん』とか、『お母さん』て感じですね、王様」

そう甘くはない。