デブスの不思議な旅 ～恋と変と狂愛？と～

震える足を踏みしめて、桜はきっと涙をはらった。

ぎゅうっと、自分に与えられた唯一の武器を握りしめる。

高鳴る鼓動と、強い緊張はそのままだったが、彼女は正面から敵を見据えた。

そんな桜の内面の変化など誰も気付かず、相変わらずヤジや歓声をあげている。

じり、じり、と獣が近づき、桜はすこしずつ後退する。恐ろしさから震えはしたものの、獣の目から目線を外さなかった。

多分、一瞬でも隙を見せたら…飛びかかってくる。

おそらく、間合いはギリギリ。
額には、汗がにじんでいた。

その間にも、必死に考える。

…どうしたらいい？

生き残るには、どうしてもこの青いサーベルタイガーを殺さないといけない。
でもこんな小さな槍と私の腕力じゃ、あんな大きな獣に致命傷なんか負わせられない。
あるいは…戦闘不能にするか。

どうやって。

…目をつぶす？
だめだ。襲われながらもこんな小さな刃で、目のような細かい場所を正確に突くなんて、素人の私には多分できない。
失敗してそのまま殺される。まして、目は二つある。一つつぶしたからといって、戦闘不能になるかどうか。