デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

フードの人物が、桜の前に立つ。

気配と言うか、肉体の存在の温かさが全く感じられない。

こく、と生唾を飲み込む桜に、冷たい笑いを向けた。


「また、会ったな。異形の人の子」


今度は、はっきりとした声だ。

すっとこちらを見下ろすように顎をあげると、闇のような瞳が見えた。

「おかしな女だ。普通、この世界の人の子なら、我の正体が分かったら金切り声をあげるものを。お前は冷静だ」

「…………」

「お前が黒髪黒い瞳を持っていることと、何か関係があるのか?」

スッ、と青白くさえある手を伸ばして、桜の顎をつかんだ。

「冷た………っ!」

まるで氷だ。桜は思わず肩をすくめた。

クックッと喉の奥で笑う。フードからのぞく瞳が、一瞬金色に輝いた。

「このままお前を連れて行って、隅々まで調べてもいいのだが………少々今は都合が悪い」

パッ、と手を離す。

震えながら、桜が口を開いた。

「………あなた、『魔』でしょう。……前から、こんな所で、何してるんですか………」

腰が抜けそうになりながら、精一杯その冷徹な顔を見返した。