デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

お目当ての店に着いた時、桜は目を丸くした。

(魔法使いのお店みたい……)

少しスパイシーな香りが立ちこめる、薬屋だった。

四方の壁の棚にはギッシリとガラスのビンが並べられ、ありとあらゆる薬の材料が売られている。
天井からはよくわからない植物の干した物が、これまたたくさんぶら下がっていて、床には細かい模様の絨毯が敷かれていた。

「すごいですね……」

桜が目をきらきらさせながら店内を眺めると、アスナイは笑ってうなずいた。

「この薬屋は、珍しい材料も手に入る。品もいいし、気に入ってるんだ」

桜に会いに来るのが第一の目的だったが、ここと本屋にも寄りたかった。

「どんな所でも、王都程の品揃えの店はないからな」

うなずいて、不用意に触らないように、控えめに見る桜。

「おや、アスナイさんじゃありませんか」

穏やかな深い声がして、店の奥から古ぼけたメガネをかけた小柄な老人が、そしてあとに続いて、クリっとした深緑の目が印象的な娘が、干した植物を抱えて出てきた。

アスナイを見て、はっと小さく息を呑み、うつむいてパタパタとエプロンをはたいた。

「久しぶりだな、主人。何か新しいものは入ってるか」

彼にしては珍しく、微笑みをうかべてカウンターに近寄る。

「そうですねえ、肉のものなら白イノシシの脾臓、赤マダラ鮫の肝臓が掘り出し物ですかね。ああ、ヌバタコウモリの羽と骨もありますよ。なかなかいい品です」