デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王宮の門に着いて、アスナイは桜を馬から下ろした。

「ごちそうさまでした、アスナイさん」

にっこり笑って、深々と頭を下げる彼女は、まだほろ酔いだ。

「忘れるなよ、今日、お前にした事……言った事」

じっと目を見つめて、両手でそっと月明かりに白く浮かぶ顔を上向かせた。

夜目にも頬を赤くして、「…はい」と小さくうなずく。

「なら…いい」

馬車が到着し、桜が乗り込んだ。

「また、明日ですね」

「ああ」

ガラガラと馬車が走り去っていくのを見つめる。

(……あいつ、酔ったらあんなふうになるのか)

ふわん、とした顔と、いつもよりこなれた雰囲気。

思いがけず翻弄されたのが悔しい。

(危なっかしいな……)

馬の手綱を引きながら歩き出した。

自分が桜の部屋まで送れればいいのだが、公宮から奥は王の私的なエリアとみなされているため、近衛と近侍、限られた女官以外は許可なく入れない。

(…と言うことは、あの金髪ネコは自由に出入り出来るのか)

あんなに素のままで口喧嘩をしていた桜を、初めて見た。
これが自分やシュリだったら、まず謝ることから入るだろう。
つまり、裏を返せばあの同い年の近侍とは、普段とても仲がいいのだろう。友人ではなく、夫婦に間違われた程に。

「………」

不安がよぎり、王宮を出る前にもう一度、馬車が走り去った方を見た。