デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「な……」

じーっと自分を見据える桜の顔を、凍りついたように見つめた。
胸に焦りがどんどん広がっていく。

「私、そんな人嫌いだなあ。武官の奥さんなんて、無理」

「!!」

一瞬息が止まり、後頭部がひやりとした。サッと酔いが醒めて、桜の両手を握って慌てて言い募る。

「ば、馬鹿、そんな事するわけないだろ!今だって、お前以外の女なんか目にも入らないのに……家でお前が待っててくれるなら、すぐに帰って、お前と過ごすに決まってる!!」

「そうですか?でもアスナイさん、すっごくモテるんですよね。私よりきれいな女の子ばっかりでしょう?ずっとそんな心配ばっかりして、怯えて家で待つの、嫌だな……やっぱり、無理かも」

思わずそのきれいな顔を歪め、ぐぐ、と握る手に力を込めた。

「………っ……おま、え…………!」

いつもの涼しい表情は微塵もなく、苦しそうに唇を噛んでいる。

その時、言葉を紡ごうと口を開いたアスナイに、桜はにこっと笑った。

「嘘です」

「…何?」

呆気にとられて目を見開く彼に、いたずらっぽい微笑みを向ける酔っ払い。

「わかってますよ、アスナイさんはそんな事しない方ですよね」

「……………」

「さっきのお返しです。アスナイさんも、ちょっとは焦っちゃえばいいんです」

えへへー、とふわんと笑う桜を見て、かああっと顔に熱が集まった。

「お前っ……あの赤髪のバカ以上にタチが悪いぞ!」

乱暴に、自分のグラスに酒を注いだ。