デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

父親のもとで大勢の患者を見てきたこともあるのだろうが、シュリよりもずっと人間の心の動きを感じるのに敏い彼は、桜の置かれた状況をなんとなく把握していた。

(…なるほど。バカなりに言葉を尽くしたのかも知れんな)

あとは……

(おそらくあの金髪小僧、桜に惚れてるんだろうな。近侍の癖に、それを忘れて公宮でみっともなく口喧嘩するところを見ると……単なる遊びとも考えづらい)

そして、自分の主君だ。これが一番厄介かもしれない。

(我が君が、桜を本当に独占しようとなさったなら、もう二度と会うことは叶うまい。…今は、桜への気持ちがそれほど深くないのか、それとも………ただ嫌われたくない一心で、自制していらっしゃるか)

何にせよ、早く目の前のこの娘の心を得てしまいたい。

が、桜は自分のことをどう思っているのだろう。

風に髪をなびかせて、周りの景色を眺める彼女を見つめた。

(……鈍そうだしな……)

困ったように少し笑ったところで、王宮の門に着いた。

シュリの時と同じように、アスナイの赤紫の馬が待っていた。

「久しぶり…昨日、お友達にも会ったんだよ」

微笑んで、鼻を抱えてなでてやる。

「こいつも嬉しそうだ。お前になついてたからな」

そう言って、「行こう」と手綱を取って歩き出した。