デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「え…」

目を丸くして、王を見る桜。その表情は無く、目は伏せられていた。

「アスナイが、そなたに会いに来ているはずだ」

小さく笑った。

「え…アスナイさんが?!」

「………」

思わず声が弾む桜と、顔を強張らせるカナン。

その時、「ではな」と踵を返そうとする王の、少し寂しそうな横顔が桜の目に映った。

(あ……)

今日のやり取りが、頭によみがえる。

なぜか胸が少し絞まって、思わず王のシャツの裾をつかんだ。

「!」

驚いた顔で、彼女を振り返る。

「あ……え、と……」

自分でもよくわからない行動に、しどろもどろになって言った。

「遅く、ならないようにしますから……心配しないで、ください……」

我ながら的はずれなと思ったが、何だか彼を引き止めて、何か言いたかったのだ。

「………っ」

目を細めて、ぎゅっと桜を抱きしめた。
はあ、と切なげな息をついて、そっと体を離す。

「ああ。……行っておいで」