デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

頭が真っ白になり、目を見開いたまま、桜は固まった。

えっ………え!?


グルグルと低く小さな声でうなりながら、ゆっくりと桜へ歩み寄ってくる。

深いブルーの体毛。上あごから大きく突き出した長い牙を持つその姿は、地球上に大昔存在した『サーベルタイガー』そっくりだ。

ガシャン、という音がして、向こう側の入り口が閉じられた。

観客が、ワアッと歓声をあげる。


―さあ、最高のショーの始まりだ―


それに応えるように、目の前の獣が桜に向かって咆哮した。

グアアアアアア!!


「ひっ…!!」


へたり込んでいた桜は我に返ると、弾かれるように立ち上がった。

その時、背後に『カラン』と何かが投げ込まれる音がした。
驚いて振り返ると、中年男が小さな槍を投げ込んだものだと分かった。