デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

帳を払って、桜はおずおずと中に入った。

(ちょっと…すぐ、何か着るものか隠すものを貸してもらおう)

そう思いながら。

「桜。どうした、来るが良い」

にこっと笑って、手を差し伸べた。

恥ずかしさにうつむいたまま、仕方なく思い切ってその手を取った。
桜の姿を見て、王も目を丸くした。

「そなた……」

「分かってます、すみません!こういうのしかなかったんです……。あのう、着るものか、も少し厚手の布貸してください」

肩を縮めて、早口で言った。

「何を謝る」

おかしそうに笑って、じっと桜を見つめた。

「可愛い」

「へ……」

羞恥に瞳を潤ませて王の顔を見上げると、頬をほんのり染めている。
ますます赤くなってまたうつむいた。

そっと桜の手を引っ張って、ソファに座らせる。

ふいに、スルッとストールが取られた。

「わぁっ!ダメ!ダメです王様!返してください!」

桜のあまりのパニックぶりに、声をたてて笑いだした。

「こっちの方がいい」

「よくないです!見苦しいから!」

「見苦しくなどない」

ぎゅっと抱きしめて、耳元でささやいた。

「ほら、こうすれば見えないだろう?」

「そそそそういう問題じゃ」

絶対に、この鼓動の速さはバレている。

(死ぬ死ぬ!恥ずかしすぎて死ぬ!!)

頭から湯気が出そうだ。今ばかりはシディを恨んだ。

王は王で、温かくて柔らかな彼女の首や肩に頬を寄せるたびに胸が高鳴った。
桜とは反対に、衣の司の予算を割増してやろうかな、などと考えていた。

その時。

ふいに悪戯心がわいて、そっと素肌の背中に手を置き、すうっ、と五本の指をたてて優しく引いた。

「あ……っ!」

明らかに今までとは違う声を上げて、びくん、と桜の体が腕の中で跳ねる。

「!!」

その反応に、王は思わず息をのんだ。