デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「本日の神告はございませぬ」

無表情に、深々と礼をする。

うなずきながら考えた。

(…『魔』の襲撃はまだということか)

予兆もないということは、そうなのだろう。

「ご苦労だった、ご使者。気をつけて戻られよ」

小さく微笑んで仕事を終わらせようとすると、使者がすい、と顔を上げた。

「お待ちくださいませ。今一つ、神児様からおことづけがございます」

「言付け?」

王が聞き返すと、相変わらずの無表情で言う。

「はい。先だって、こちらへやって来た異世界の者のことでございます。神児様にはその者に是非にお会いしたいと」

「………」

神児が、桜に会いたいという。

「…神児が自らの望みを言うとは、また珍しいこともあるものだな」

「はい。いたくご興味のあられるご様子ゆえ、一度神宮にその者をお遣わしいただきますよう」

使者がまた深々と頭を下げた。

神児の要求となれば、いくら王でも一蹴はできない。

「……相わかった。そちらでよき日を選んでまた言うがよい。桜を……客人を向かわせよう」

王の言葉に、使者は礼を述べて退出した。