野太いその声に、客席が静かになる。
中年男が満面の笑みを浮かべながら、客に向かって何か大声で言っている。
何、言ってるんだろ。言葉が分からない…
時おり、桜のほうを指さし、趣味の悪い冗談でも言っているのだろうか、どっと客をわかせている。
やがて男の口上は終わり、客に向かって一礼した。
「…終わり…?…良かった…」
ほうっと安堵の息をついた桜だったが、次の瞬間、檻の周りに焚かれているかがり火が、一斉にゴウッ!!と燃え上がった。
「きゃあ!?」
ビクッと体を震わせ、目を見開いて、このショーはまだ終わりなんかではない事を悟った。
ふと、ガチャガチャ、カツンという音に気付いた桜。明らかに、この檻に何かをぶつけているような音だ。
「な、何…?」
煌々と火に照らされながら、桜は左右を見回してその音の正体を探った。言いようのない不安が、胸に押し寄せる。
すると、桜が入ってきた扉の向かい側の檻の柵が、ゆっくりと開かれた。
入口が二つあったことに驚くヒマもなく、彼女の目はそこにくぎ付けになった。
大きな牙。
血に飢えた、狂気的な目。
大きな猛獣が、彼女のいる檻に、ゆっくりと滑り込んできた。
中年男が満面の笑みを浮かべながら、客に向かって何か大声で言っている。
何、言ってるんだろ。言葉が分からない…
時おり、桜のほうを指さし、趣味の悪い冗談でも言っているのだろうか、どっと客をわかせている。
やがて男の口上は終わり、客に向かって一礼した。
「…終わり…?…良かった…」
ほうっと安堵の息をついた桜だったが、次の瞬間、檻の周りに焚かれているかがり火が、一斉にゴウッ!!と燃え上がった。
「きゃあ!?」
ビクッと体を震わせ、目を見開いて、このショーはまだ終わりなんかではない事を悟った。
ふと、ガチャガチャ、カツンという音に気付いた桜。明らかに、この檻に何かをぶつけているような音だ。
「な、何…?」
煌々と火に照らされながら、桜は左右を見回してその音の正体を探った。言いようのない不安が、胸に押し寄せる。
すると、桜が入ってきた扉の向かい側の檻の柵が、ゆっくりと開かれた。
入口が二つあったことに驚くヒマもなく、彼女の目はそこにくぎ付けになった。
大きな牙。
血に飢えた、狂気的な目。
大きな猛獣が、彼女のいる檻に、ゆっくりと滑り込んできた。
