デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

さてと、一人目は。

紫の瞳を戸口に向けて待っていると、

「失礼いたします」

静かで、かつ張りのある若い声が響いた。

肩までのグレーの髪に紺色の目をした、端麗な武官が入ってきた。

アスナイ!

王の目がわずかに見開かれた。

「我が君にはご機嫌麗しく。赴任地の内情報告にまかり越してございます」

折り目正しく礼をした。

やっと昨日、シュリが帰ったというのに。

心の中の小さな苛立ちが、耳飾りをシャラ、と揺らした。

「…大儀であった」

そんな心情などは顔に出さずに、穏やかに微笑んだ。
するとアスナイはまた頭を下げた。

「恐れながら、先の褒賞にのっとり、私事を一つお許しくださいますよう」

何かは言われなくても分かっている。

「何だ」

「は、桜と会うことを、お許しいただけましょうか」

「……良いだろう。ただし、今日の夕刻からと、明日の午前中と、夕刻からだが」