桜のあげた悲鳴で、それまで思い思いに楽しんでいた客が、一斉にこちらを見た。

わあっと歓声をあげ、ヤジのようなどなり声を飛ばしたり、裸の桜を指さしてあざけっている。

自分を侮蔑やあざけりのの対象として刺さる、目、目、目――

恐ろしさと恥ずかしさで、桜は震えながらしゃがみこんだ。

涙が自然とあふれ、彼女のニキビだらけの頬を濡らしてゆく。

その様子を、客たちはいっそう嗤(わら)うのだった。


そうか…ここは、見世物小屋だったんだ。


やっと、この場所を理解した桜。しかし、それが今一体何の役に立つだろう。

ただただ、必死に耐えるしかない。

桜を檻に押し込んだ張本人の中年男は、客の反応を満足げにながめていたが、しばらくして大げさな咳ばらいをした。