デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜が自宅の玄関ドアを開けるころには、すっかりあたりは暗くなっていた。

無人の家には、外の夕闇よりもっと深い闇が横たわっている。


「……ただいま」


ひとり言のようにぽつんと呟くと、リビングの灯りをつける。


桜の両親は、今この家に住んでいなかった。
二つ下の弟を連れて、商社に勤める父親の赴任先であるドバイにいる。



『せっかく志望校に受かったんだもの、桜は日本にいたいわよね?』


母親が、桜とは似ても似つかない美しい顔にほほ笑みを浮かべてそう言ったのは一年と半年ほど前。


『そうだな、桜はしっかりしてるから…おかしな連中とつきあったりしないし、この家を守ってくれるなら安心だ』

父親もめったにみせない優しいまなざしで、桜の頭に手を置いた。