デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

そのやけに具体的な言葉に、桜は首をかしげた。

「……シュリさん、やっぱり今、好きな女の人がいるんじゃないんですか」

「…………」

それには答えず、カタ、とグラスを置いた。

「……断ったか」

少しうつむいた横顔のまま、ボソリと低い声でシュリが桜に聞いた。

「え?」

「王と、あの近侍に。無理だって、断ったか?」

「あ…」

あのことか、と思い至って、桜は居住まいを正した。

「シュリさん。私、それはできませんし、するつもりもありません」

ぴくり、とグラスにかけたシュリの指が反応したが、相変わらずその表情は分からなかった。

「シュリさんが助言してくださって何なんですけど……王様もカナンも、こんな私に告白してくれたんです。私自身でさえ、なかなか私のことを好きになんかなれなかったのに」

「……」

「それに、ちゃんと応えたいんです。それに、その……か、考えられなくは、ないし……」

ぐ、とシュリが歯を食いしばったのには気づかず、桜はうっすらと頬を染めた。