デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

公宮の中ほどまで来て、桜はカナンに言った。

「ここまででいいよ、カナン。あとはわかるから」

が、薄く笑みを浮かべた彼は頭を振った。

「いや、出入り口まで送る」

桜の手を握ったまま、シュリの待つ公宮の正面入口へ向かった。

昨日と同じように、逆光を受けてたたずむシュリの背の高い影がある。

足音を聞いて、くるりとこちらを向いたのが分かった。

「さく……」

笑顔で言いかけたが、二人の繋がれた手を見て顔が強張った。

その時初めて、カナンはそっと手を離した。

そして、桜の顔を見て微笑んで言う。

「今日も、お前の部屋に灯を入れに来るから」

「え…でも、カナン、帰りが遅くなっちゃうよ」

「別にいい。私は王宮のすぐ近くに住んでるからな。いくら遅くなっても、大したことはない」

そっと、桜をシュリの方へとうながしながら、自分を厳しい目で見るブラウンの瞳を睨み返した。

――やられたらやり返す。文官だからって、なめるなよ。

すうっと冷たい笑いを桜越しにシュリに向けた。

「では、私はこれで失礼いたします」

深々と、頭を下げた。