デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「すまない、意固地になりすぎた」

「いえ…私が全部悪いです。ほんとに、無神経で嫌になります……すみません……」

黒い瞳を潤ませてうつむくその姿に、きゅっと胸が愛しさで絞まった。
もう完全に白旗を上げた王は、そっとその髪をなでて、顔を上向かせた。

「午後のこの時間はどうしても潰したくない。午前中だけでいいなら、何か仕事をしてみるか?」

「え……でも、いいです、もう」

首を振る桜に、笑いかけた。

「いいと言ったらいいのだ。何かしたい事があるのか?」

「いえ…はっきりと決めてたわけではないので」

さら、と藍色の髪をこぼしながら首をかしげた。

「…そうだな……午前中だけでも構わない職務といったら何があるか」

少し考えていたが、ふと思い出したように桜に言った。

「仕事もだが、そなた、乗馬もするのだろう?どちらかにしないと、無理ではないか」

「あ……」

そうだ。どっちかあきらめないと。
でも、ここはお仕事をあきらめるべきだろう。

「金など、そなたがねだればいくらでもやるものを」

そっと、その頬に触れた。

「………」

「それは、嫌なのだろう?」

こくん、とうなずく桜の髪を、またなでた。