デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「でも、私そういうの嫌なんです。なんか…遠慮しちゃうじゃないですか」

「ならば、街になど出なければいい。宮にいれば金など一銭もいらん。必要なものがあれば言うが良い」

「それだって、王様がかわりに負担してくださってるだけの話でしょう?だから少しでも」

「桜」

圧のある声で名を呼び、紫の瞳をいらだたしげに彼女に向けた。

「そなた、やはり分かっておらぬな。そういう問題ではない」

「え…」

戸惑うその表情を見て、やれやれと鬱陶しげに藍色の髪を払った。

「カナンやシュリやアスナイと王都で楽しむために、仕事の斡旋を私に頼むか。よくよく、私の気持ちも軽く見られたものだな」

「あ…」

自分の無神経さに、今初めて気づく。

恥ずかしくなって、「すみません……」と謝り、しょんぼりとソファの隅で小さくなった。

(…まったく。少しは痛い目を見なければ、この鈍いのは治るまい)

横目で彼女のうなだれた後ろ姿を一度睨んで、青空にゆっくりと流れる雲を眺めていた。