デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

シュリの言った通り、惣菜の匂いがいっぱいの店がズラッと並ぶ一角は、今から仕事に向かう人間の波でごった返していた。

「……ほんとだ、お弁当も人もいっぱい」

桜が目を見張る。

「フードが取れたらいけないから、お前はここでリーと待ってろ。俺がちょっと行って買ってくる」

「あ……ありがとうございます…」

はあ…文無しって辛い。


桜を馬から降ろし、人だかりから少し離れた所に連れて行った。

「リー、桜を頼むな」

ポンと首を叩いて、シュリは人の波に向かって行った。

「優しいご主人だね」

優しく鼻面をなでながら、しばらく行き交う人々を見ていた。

……と。


―――お前、何者だ


いきなり、ゾクリ、と悪寒がはしった。

背後に人外の何かの冷たさを感じて、桜は凍りつく。

目線だけをさまよわせると、リーが桜の背後に向かって歯をむき出し、耳をぺったりと伏せて威嚇している。


―――この間も、人の子といたな


声なのか、風なのか分からない言葉が、桜の耳にすべりこんできた。