話し終わると、店主が以上ですと言うように一礼した。
「…間違いなくカタギの人間ではないな、その男」
シュリがアスナイを見やると、アスナイも頷いた。
「ああ。だが…そこからそう遠くへも行っていないだろう。…店主」
「はい」
「お前が知っているのは、間違いなくそれだけだな」
「神に…いえ、黄金に誓って」
ニコリと静かにほほ笑む店主を見て、嘘はないと確信したアスナイは、掛けていた椅子から立ち上がった。
「アスナイ、なぜ遠くへ行っていないと分かる」
つられて立ち上がったシュリが尋ねた。
「情報が少なすぎるからだ」
「ん?」
「そんな目立つナリの者を連れて歩いたら、少なからず人の目につく。ならば自然と情報としてもっと多く、詳しくても良いはずだ。だがそうではない。…おそらく、その付近の裏路地に潜んでいる、非合法の業者か何かだろう」