デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

てくてくと歩きながら、桜は思った。

最初は完璧で、だから何考えているか分からないような冷たさを感じた王様が、私には弱さも嫉妬も見せる。
王様はどうやらそんな自分が嫌みたいだけど、私はそうは思わない。
自分にしかそういう面を見せた事がないと言われたら、それはやっぱり、自分が特別に感じてしまう。

それに、その方がずっと、その……魅力的に見える。


そっと、胸のネックレスに触れた。

これだって、カナンが『いつもつけておく』って言ったときは、本当にどきどきした。
もちろん、かわいいからつけているけど、あの着物の奥にこのペアがあるのかなって、カナンと会うたびに思っている。



空を見上げると、二つの月が白く輝いている。

一人で歩く桜は、ゆっくりと歌を口ずさんだ。
酔ってないと、こんな事はしないが。

『Fly me to the moon』。

サビからしか歌えないが、このジャズのラブソングの名曲は好きだった。和訳も読んで、素敵だなあと思ったものだ。

ちょうど曲が終わる頃、客用の宮に着いた。

(…ん?)

灯が見える。入り口に誰かが立っているらしい。

(誰…?)

目を凝らすと、肩上の金髪が静かに夜風に揺れていた。

「カナン……?!」

桜が驚いて駆け寄ると、ランプの灯に照らされた緑の瞳が、こっちを向いた。