デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

シュリの言葉に違わず、彼の馬術の精度は少しも変わらなかった。

(はあ…すごいな)

まだまだ人の多い大路を、一定の速度でスルスルと馬を進めていく。

夜風が、火照った頬に気持ちいい。

シュリはさっきから黙々と手綱を操っていた。

間もなくして王宮前の堀が見えてきて、「あ、着いた」と桜が呟いた。

「…………」

ちょうど市街地が終わるところで、シュリはぴたっと馬を止めた。

「あ、降りるんですか、シュリさん?」

桜が少し顔を振り向かせて聞くと、トス、とその額が桜の右肩に落ちた。

「ひゃっ!え、シュリさん!大丈夫ですか?」

酔って意識がなくなったのかと焦った桜が身をひねろうとすると、ぎゅっと後ろから抱きしめられた。

「わっ」

「……分からないんじゃなくて、最初から興味がないんじゃねーのか?」

顔を伏せたまま静かに、シュリが言った。

「えっ?」

一瞬何のことか分からず、桜はまばたきした。

「お前の、気持ちのことだよ。そんだけ毎日顔を合わせてて、好きだって示されてるのに、まだ王にも文官にも、全然応えられてねーんだろ?……じゃあお前はきっと、二人のことは好きにならないんだ」

「………」

桜が絶句していると、シュリが顔を上げて桜を見た。

何故か、その瞳が切なげに揺れている。

「……断れよ。無理だ、って」