デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~


のらりくらりと言い逃れる主人に、シュリが大きな声を出した。

「おいお前、また金をたかる気か!いい加減にしないと、王命の名のもとにお前を罰するぞ」

鋭い武官の顔で、剣の柄に手をかけた。

「よせ、シュリ」

アスナイがすかさず静かに制した。

「『王命』だの『武官』の威光なんてものは、この街の連中にとっては意味は無いんだ。事によっちゃ、夜俺とお前の寝首をかくことも何とも思わん奴らもウヨウヨいる」

懐からもう一枚金貨を取り出したアスナイは、ひらひらとそれをシュリの目の前で振った。


「ここでは全て金で安全や情報が手に入る。単純で分かりやすい土地じゃないか。―愚劣とも言うがな」

フン、と冷笑して足元に金貨を投げてよこしたアスナイを、店主は一瞬殺気をはらんだ目で見たが、すぐに元のように深い笑みをうかべた。